中国古典舞「踏歌」とは?日本の踏歌は今も見られる

中国古典舞「踏歌」とは?日本の踏歌は今も見られる

中国古典舞踊に「踏歌」という演目があります。
踏歌は非常に古い踊りのスタイルです。演目としては、うら若い女性たちが、野原で足を踏み鳴らしながら踊る、という曲ですが、実は日本にも踏歌は存在します。

踏歌とは

「踏歌」というのは、もとは中国の歴史上にあった国家「漢」の時代に始まり、「唐」の時代まで非常に流行した、舞踊のスタイルです。

最初の頃は男性も踏歌を踊っていたそうですが、次第に女性の踊るものだけが残っていきました。

踊り方は、地面を足で踏むときに、音を立てるというものです。

現代の中国古典舞踊の演目「踏歌」は、当時の女性たちをイメージして、野原で仲間同士で踊り、春のピクニックをたのしむ場面を描いているそうです。歌詞は愛や恋の心の想いを描いています。

踏歌は日本に伝来

中国では唐代まで流行した後、踏歌は廃れてしまいましたが、当時、踏歌は日本に伝来し、宮中の年中行事として脈々と受け継がれていました。中国の古代文化を研究するにあたって、日本で行事化したことから、中国の古代の文化の様子を知ることも、実は多くあるようです。中国では何度も王朝が変わってきましたから、当時の姿をうかがい知ることができなくなったものもあるようです。それが、伝播先の日本で伝統形式として守られ、逆に当時の姿を知る手掛かりとなることがあるそうです。

日本に伝来した踏歌は、実は今でも見ることができます。宮中行事としては平安時代末以降、残ってはいませんが、神事として現存し、熱田神宮などで見ることができます。

中国から伝来した上代歌舞の一つ。大ぜいの人が足で地を踏みながら拍子をとりつつ歌い踊るもので、一名アラレハシリともよばれる。ハシリとは舞踏の意であるらしい。本来、隋(ずい)・唐の民間行事で、正月上元の夜の観灯会に行うのを例とした。わが国では、『日本書紀』持統(じとう)天皇7年(693)正月16日条にその初見例がみえ、これ以後しだいに踏歌節会(とうかのせちえ)として宮廷の年中行事の一つとなって定着したらしい。儀式のようすは『内裏式(だいりしき)』『西宮記(さいぐうき)』などに詳しい。男(おとこ)踏歌と女(おんな)踏歌とがあり、いずれも天皇の長久とその年の豊穣(ほうじょう)を祈ることを目的とした。踏歌は一方で民間にも普及したらしく、766年(天平神護2)には、風俗を乱すとの理由で畿内(きない)の民間踏歌が禁断されている。歌詞は当初は唐詩を用いたが、行事が日本化するとともに催馬楽(さいばら)の「我家(わいえ)」「竹河(たけかわ)」などが用いられるようになった。平安末ごろには衰退し、節会として行われることは絶えた。
コトバンク「日本大百科全書(ニッポニカ)「踏歌」の解説」より

また、文献でも絵が残っていて、知ることができます。『年中行事絵巻』巻十「女踏歌」に、その様子が細かく記されているので、当時の踏歌の行われる時間帯までも、知ることができます。時期によって、行われる時間も少し変化しているようです。日本の踏歌についてこちらのブログが非常に詳しいので、紹介させていただきます。→「第49回 『年中行事絵巻』巻十「女踏歌」を読み解く

現代の中国古典舞踊「踏歌」を踊るときには

現代の中国古典舞踊には、「踏歌」という演目があります。十代の若い女性たちが野原で踊る様子を描いています。

実際に足音を踏み鳴らしながら踊る、群舞になります。集団で踊るので、まめにフォーメーションが変わったり、同じ演目でも踊る団体や人数によってフォーメーションや構成を多少変える必要がありますから、どれをみても非常に楽しいのではないかと思います。

さて、では実際に踊るとき、踊り手はどういうことを意識すればよいのか、ということについてです。「踏歌」は、漢~唐代の、十代の女性たちということですから、役作りとしてはまず「若い女性」ということを意識しなければなりません。踊り手の年齢層はバラバラですが、設定が若い女性たちなので、姿勢をしっかりときれいにすることをまず注意されます。一瞬でも不必要に背中が曲がっていたりすると、「年寄り」という印象を観客に与えてしまいます。

次に「おおらかすぎないこと」も注意されます。昔の中国の女性なので、恥ずかしさや恥じらいをもっている、という意識が、欠かせません。特に若い女性なので、一層恥じらいが必要になります。これが、現代人の日常の「あまり気にしない」「率直」「積極的」な印象になると、世界観が一気にこわれてしまいます。ですから、実際どういうふうに動けばよいのかというと、ガシガシと張り切って踊ると、恥じらいどころか、積極的すぎる感じになってしまい、これも美しさが損なわれるので、注意されます。左右の肩を交互に前に出して進むところなども、単純な動きながらさりげなく移動するのは意外と難しく、うまくやれば「恥じらっている」かわいらしい動きになるのですが、下手を踏むとオラオラというか、「私を選びなさい!!」みたいな、強すぎる、遠慮のない女性に見えてしまうことがあります。

中国舞踊は、基本的に柔らかい動きが非常に特徴的です。踏歌も例外ではなく、ステージが大きければ大きく歩幅を進める必要がある個所もありますが、腕の動きや表現は、柔らかい必要があります。特に曲自体がゆったりしているので、踏歌でパキパキと動く必要はありません。

しかし、漢や唐の踊りですから、衣装の袖がとにかく長いです。足まで袖が伸びているので、観客が踊り手の手を見ることはまずありません。踊り手も、手を伸ばしたり回したりするときには、袖がどういう動きになるのか、動きの着地点のときにどうなっているのが正解なのかを理解して、腕の動きを練習すべきだと思います。

中国古典舞の特徴

袖をとばすために動かしたり、腕を動かすために袖を意識したりしながら、練習を進めていかないといけないので、意外と考えることはたくさんあります。

また、太極拳とよく通じている中国古典舞ですので、いわゆる「円の動き」「陰陽の動き」のようなところはたくさん出てきます。バレエと違い、背中を伸ばしっぱなしではなく、背中の柔らかさを目いっぱい使うところも特徴的です。また、足の使い方も独特で、バレエなど多くのダンスは基本的につま先から進みますが、中国古典舞はかかとから進んだり、つま先を上げてかかとを床に滑らせながら押し出す、まさに太極拳の足のような動きもたくさん出てきます。膝も曲げたり伸ばしたり、色々です。

こうした基礎を分かったうえで、かつ「踏歌」の時代背景はどうか、踊り手はどんな人を演じているのか、一緒に踊る仲間と世界観を作るためにはどうしたらいいか、などを作り上げていきます。

大人数での群舞が多いので、仲間と協力し合うことが常に必要です。番外編ですが、稽古場が狭いとぶつかることもしばしば。手がぶつかることも中にはありますが、長い袖を着て練習するときは、最初はクラスのみんなで混乱に陥ることもあります。安全に踊ることも考えたり、人間関係を良好に保ちながら活動していくことも欠かせません。

中国古典舞「踏歌」の歌詞

君若天上云,侬似云中鸟,
相随相依,映日浴风。 
Jūn ruò tiānshàng yún, nóng shì yún zhōng niǎo,
xiāng suí xiāngyī, yìng rì yù fēng. 

君若湖中水,侬似水心花,相亲相怜,浴月弄影。 
Jūn ruò hú zhōng shuǐ, nóng sì shuǐ xīn huā,
xiāngqīn xiāng lián, yù yuè nòng yǐng. 

人间缘何聚散,人间何有悲欢,
但愿与君长相守,莫作昙花一现。
Rénjiān yuánhé jù sàn, rénjiān hé yǒu bēi huān,
dàn yuàn yǔ jūn zhǎng xiàng shǒu, mò zuò tánhuāyīxiàn.

現代中国語で「私→我」「あなた→你」ですが、この歌詞では「私→侬」「あなた→君」となっています。これは古代の表現で、特に書き言葉で使われるものだそうです。「人間」とあるのは「ひと」の意味ではなく、ここでは「世間」「人の世」「世の中」といった意味になります。

あなたが空の雲なら、私はその中の鳥、たがいにつかず離れず、日と風を浴びる
あなたが湖の水なら、私はその中に咲く花、互いに愛し合い、月の光を浴び影をつくる
この世の中は出会いや別れを繰り返し、喜びや悲しみがある
私はあなたと共にあることを願い、花の一瞬に雲が作られぬよう

(中国語は初心者なので、訳が多少間違っているところがあるかもしれません。)